MIDI制御/Adafruit Music Maker
2021.08.07
YouTube でも紹介しています。画像をクリックすると再生できます。
今回は、Adafruit Music Maker をシリアル接続により、MIDI制御します。
Adafruit Music Maker は、オンボードSDカードからMP3、AAC、Ogg Vorbis、WMA、MIDI、FLAC、WAV(PCMおよびADPCM)など
様々なオーディオ形式を再生できます。エンコード/デコード(コーデック)チップにはVS1053を採用しています。
低音、高音、音量をデジタルで調整するなど、様々な機能を備えており、SPIインターフェースにより、
また、MIDIモードに切り替えることにより、UART RXピンから 31250Kbaud MIDIデータを読み込ませ、シンセ/ドラムマシンのように機能させることができます。
ドラムとサンプルのエフェクトが多数組み込まれています。
Music Makerの裏面です。
MIDIモードに設定して、MIDI制御を行うので、MIDIジャンパーをはんだ付けしてショートさせます。
一旦、ショートさせると、SDカードから音楽を再生する機能を使うことができなくなります。
■配線
ラズベリーパイから、Arduino Nano を介して、Music Maker へ接続します。
Nanoの3V3とGNDをMusic Makerの3VとGNDへ、TXはRXへ接続するだけのシンプルな構成です。
ここで、ラズベリーパイとMusic Maker を直接接続すればよいと思われるかもしれません。
ラズベリーパイは標準でボーレート31250をサポートしていません。
クロック周波数を下げて、ボーレート38400を31250に見せかけることは可能なのですが、Music Maker のためだけに環境を汚したくありません。
配線すると、こんな感じになります。
Music Maker のイヤホン端子をラジオのLINE-INに繋いで音をだします。
■プロジェクトの作成
ここでは開発環境として、PlatformIOを使用しています。
→Arduino開発環境構築 PlatformIO
$ mkdir ~/MusicMaker
$ cd MusicMaker
$ pio init -b nanoatmega328
■Adafruit VS1053 Library のダウンロード
Adafruit VS1053 Library
examples/feather_midiフォルダーにある feather_midi.ino を ~/MusicMaker/src に配置します。
feather_midi.ino
#define VS1053_BANK_DEFAULT 0x00
#define VS1053_BANK_DRUMS1 0x78
#define VS1053_BANK_DRUMS2 0x7F
#define VS1053_BANK_MELODY 0x79
#define VS1053_GM1_OCARINA 80
#define MIDI_NOTE_ON 0x90
#define MIDI_NOTE_OFF 0x80
#define MIDI_CHAN_MSG 0xB0
#define MIDI_CHAN_BANK 0x00
#define MIDI_CHAN_VOLUME 0x07
#define MIDI_CHAN_PROGRAM 0xC0
#if defined(ESP8266) || defined(__AVR_ATmega328__) || defined(__AVR_ATmega328P__)
#define VS1053_MIDI Serial
#else
#define VS1053_MIDI Serial1
#endif
void setup() {
delay(1000);
Serial.begin(115200);
Serial.println("VS1053 MIDI test");
VS1053_MIDI.begin(31250); // MIDI uses a 'strange baud rate'
midiSetChannelBank(0, VS1053_BANK_MELODY);
midiSetChannelVolume(0, 127);
midiSetInstrument(0, VS1053_GM1_OCARINA);
}
void loop() {
for (uint8_t i=60; i<69; i++) {
midiNoteOn(0, i, 127);
delay(100);
midiNoteOff(0, i, 127);
}
delay(1000);
}
void midiSetInstrument(uint8_t chan, uint8_t inst) {
if (chan > 15) return;
inst --; // page 32 has instruments starting with 1 not 0 :(
if (inst > 127) return;
VS1053_MIDI.write(MIDI_CHAN_PROGRAM | chan);
delay(10);
VS1053_MIDI.write(inst);
delay(10);
}
void midiSetChannelVolume(uint8_t chan, uint8_t vol) {
if (chan > 15) return;
if (vol > 127) return;
VS1053_MIDI.write(MIDI_CHAN_MSG | chan);
VS1053_MIDI.write(MIDI_CHAN_VOLUME);
VS1053_MIDI.write(vol);
}
void midiSetChannelBank(uint8_t chan, uint8_t bank) {
if (chan > 15) return;
if (bank > 127) return;
VS1053_MIDI.write(MIDI_CHAN_MSG | chan);
VS1053_MIDI.write((uint8_t)MIDI_CHAN_BANK);
VS1053_MIDI.write(bank);
}
void midiNoteOn(uint8_t chan, uint8_t n, uint8_t vel) {
if (chan > 15) return;
if (n > 127) return;
if (vel > 127) return;
VS1053_MIDI.write(MIDI_NOTE_ON | chan);
VS1053_MIDI.write(n);
VS1053_MIDI.write(vel);
}
void midiNoteOff(uint8_t chan, uint8_t n, uint8_t vel) {
if (chan > 15) return;
if (n > 127) return;
if (vel > 127) return;
VS1053_MIDI.write(MIDI_NOTE_OFF | chan);
VS1053_MIDI.write(n);
VS1053_MIDI.write(vel);
}
■テスト
$ pio run -t upload
HTML5のaudioに対応していないブラウザのためサンプルは表示されません。
【補足】MIDI FORMAT 1 非対応
Adafruit Music Maker は、MIDI FORMAT 1 に対応していません。
MIDI再生:FM音源YMF825+Arduino編
では、ラズベリーパイでMIDIファイルを再生し、ttymidi を使って、Arduino Nano経由でYMF825で音を鳴らせてみました。
ヤマハFM音源LSI YMF825搭載モジュール YMF825Board
ヤマハのFM音源チップYMF825(SD-1)を搭載した音源ボードです。ヤマハ独自のFMシンセサイザを搭載し、数種類のパラメータ指定により豊かなサウンドを再生することが可能です。
ArduinoやRaspberry Pi等のマイコンボードから、SPIを通して直接YMF825のレジスタを制御することで発音させます。スピーカーアンプも搭載しているので、アンプ回路を別途外部に用意する必要がありません。
・4オペレータのFM音源
・最大16音同時に発音可能
・FMの基本波形29種類内蔵、アルゴリズム8種類
・SPIによるシリアルインタフェース
・スピーカアンプ内蔵
・3バンドイコライザ内蔵
・16 bitモノラルD/Aコンバータ内蔵
・動作電圧:5V
ラズベリーパイのコマンドラインから
$ aplaymidi -p 128:1 Aria.mid
を実行して、YMF825Board で再生しました。
同じことを、Adafruit Music Maker で行おうとしたところうまくいきません。
VS1053bのデータシートを確認したところ、MIDIフォーマット1には対応していないことが判明しました。
8.9 Supported MIDI Formats (Page.31)
General MIDI and SP-MIDI format0 files are played.
Format 1 and 2 files must be converted to format 0 by the user.
標準MIDIとSP-MIDIフォーマット0形式のファイルを再生できるよ。
フォーマット1および2形式のファイルは自分でフォーマット0形式に変換してね。
※SP-MIDI:Scalable Polyphony MIDI 携帯電話向けに策定されたMIDIの周辺規格
最近のMIDIファイルはほとんどがFORMAT1なので、ちょっとがっかりですが、MIDI制御コードを直接操作するので、問題はありません。
■Adafruit Music Maker による演奏
それでは、モーリス・ラヴェルのマ・メール・ロアの最初の部分を演奏させるコードを書いてみましょう。
◇演奏楽器情報を定義する
MIDI規格で定められている標準的な楽器番号を定義します。
使う楽器だけ定義すればよいのですが、後々のことを考えて、128種類全部定義しておきました。
$ vi ~/MusicMaker/src/gm_instruments.h
#define GM_ACOUSTIC_PIANO 0x00
#define GM_BRIGHT_PIANO 0x01
#define GM_ELECTRIC_GRAND_PIANO 0x02
#define GM_HONKY_TONK_PIANO 0x03
.......
#define GM_PAD_1_FANTASIA 0x58
.......
今回は演奏楽器として、ファンタジアを使用します。
◇音の番号(NOTE NUMBER)を定義する
MIDIで定義されている音の番号を記述します。
$ vi ~/MusicMaker/src/gm_notes.h
.......
#define NOTE_C4 60
#define NOTE_CS4 61
#define NOTE_D4 62
#define NOTE_DS4 63
#define NOTE_E4 64
#define NOTE_F4 65
#define NOTE_FS4 66
#define NOTE_G4 67
#define NOTE_GS4 68
#define NOTE_A4 69
#define NOTE_AS4 70
#define NOTE_B4 71
.......
◇音の強弱を定義する
$ vi ~/MusicMaker/src/gm_velocities.h
#define VELOCITY_PPP 16
#define VELOCITY_PP 32
#define VELOCITY_P 48
#define VELOCITY_MP 64
#define VELOCITY_MF 80
#define VELOCITY_F 96
#define VELOCITY_FF 112
#define VELOCITY_FFF 127
最大値は127になります。
◇MIDI制御コードを定義する
$ vi ~/MusicMaker/src/gm_controls.h
#define MIDI_NOTE_ON 0x90
#define MIDI_NOTE_OFF 0x80
#define MIDI_CHAN_MSG 0xB0
#define MIDI_CHAN_BANK 0x00
#define MIDI_CHAN_VOLUME 0x07
#define MIDI_CHAN_PROGRAM 0xC0
#define VS1053_BANK_DEFAULT 0x00
必要に応じて追記していきます。
準備が整ったところで、INOファイル本体のコードを記述していきます。
$ vi ~/MusicMaker/src/example.ino
#include <SoftwareSerial.h>
SoftwareSerial mySerial(5,6); // RX, TX
#include "gm_controls.h"
#include "gm_instruments.h"
#include "gm_notes.h"
#include "gm_velocities.h"
Arduino Nano では、USBのシリアル通信とTX,RXピンが兼用となっています。
通常のシリアル通信はラズベリーパイからの楽曲データ送信用に使用する予定ですので、
Nano と Music Maker との通信は、ソフトウェアシリアルによって行うことにします。
ここからは各種関数を作っていきます。
// 使用する楽器情報が登録されているバンクを指定する
void setChannelBank(uint8_t channel, uint8_t bank) {
mySerial.write(MIDI_CHAN_MSG | channel);
mySerial.write((uint8_t)MIDI_CHAN_BANK);
mySerial.write(bank);
}
// 指定したチャンネルの基本となる音量を指定する
void setChannelVolume(uint8_t channel, uint8_t vol) {
mySerial.write(MIDI_CHAN_MSG | channel);
mySerial.write(MIDI_CHAN_VOLUME);
mySerial.write(vol);
}
// 速度の基準となる音符に基づいて、音を鳴らしている単位時間をミリ秒単位で設定する
void setTempo(uint16_t tempo) {
double one_minutes = 60000;
midi_tempo = (uint16_t)(one_minutes/(float)tempo);
}
// 音を鳴らしている、あるいは休止状態を維持する
void midi_wait(float factor) {
delay((uint16_t)(midi_tempo*factor));
}
// 演奏に使用する音色(楽器)を指定する
void setInstrument(uint8_t channel, uint8_t instrument) {
mySerial.write(MIDI_CHAN_PROGRAM | channel);
mySerial.write(instrument);
delay(10);
}
// 音を鳴らす
void noteOn(uint8_t channel, uint8_t note, uint8_t velocity) {
mySerial.write(MIDI_NOTE_ON | channel);
mySerial.write(note);
mySerial.write(velocity);
delay(10);
}
例えば、ド(C4)の音の鳴らす指示をした場合、下記のように展開されます。
Serial.write(0x90); ← 音を鳴らす指示
Serial.write(60); ← ドの音を指定
Serial.write(64); ← 音の強弱を指定
// 音を止める
void noteOff(uint8_t channel, uint8_t note, uint8_t velocity) {
mySerial.write(MIDI_NOTE_OFF | channel);
mySerial.write(note);
mySerial.write(velocity);
delay(10);
}
次は、setup()関数です。本来音を鳴らす部分はloop()関数内で制御するのですが、テストなので、setup()関数内に直書きしています。
void setup() {
uint8_t channel = 0;
Serial.begin(38400);
mySerial.begin(31250);
setChannelBank(channel, VS1053_BANK_DEFAULT);
setChannelVolume(channel, VELOCITY_FFF);
setTempo(58);
setInstrument(channel, GM_PAD_1_FANTASIA);
noteOn(channel, NOTE_A4, VELOCITY_P);
noteOn(channel, NOTE_A3, VELOCITY_P);
midi_wait(0.5);
noteOff(channel, NOTE_A4, VELOCITY_P);
noteOn(channel, NOTE_C5, VELOCITY_P);
midi_wait(0.5);
noteOff(channel, NOTE_C5, VELOCITY_P);
noteOff(channel, NOTE_A3, VELOCITY_P);
noteOn(channel, NOTE_E5, VELOCITY_P);
noteOn(channel, NOTE_G4, VELOCITY_P);
midi_wait(1.0);
・・・・
処理の流れをみていきます。
uint8_t channel = 0;
演奏にチャンネル0を割り当てています。15チャンネルまで指定可能です。
mySerial.begin(31250);
Music Maker とのボーレートは,31250固定です。
setChannelBank(channel, VS1053_BANK_DEFAULT);
MIDI標準の楽器情報を用います。
setChannelVolume(channel, VELOCITY_FFF);
指定したチャンネルのデフォルトでの音量を最大にしています。
実際には、音を出す際に1音ずつ強弱を指定しています。
setTempo(58);
演奏速度に、♩=58を指定します。
setInstrument(channel, GM_PAD_1_FANTASIA);
音色(楽器)にファンタジアを使用します。
次に演奏制御の部分をみてみます。
最初にマ・メール・ロアの2段譜の上段と下段のラの音を同時に鳴らします。
noteOn(channel, NOTE_A4, VELOCITY_P);
noteOn(channel, NOTE_A3, VELOCITY_P);
midi_wait(0.5);
noteOff(channel, NOTE_A4, VELOCITY_P);
noteOn(channel, NOTE_C5, VELOCITY_P);
↓
noteOn(channel, NOTE_A4, VELOCITY_P);
noteOn(channel, NOTE_A3, VELOCITY_P);
midi_wait(0.5); 八分音符1個分の長さだけ音を鳴らし続けます
noteOff(channel, NOTE_A4, VELOCITY_P);
noteOn(channel, NOTE_C5, VELOCITY_P);
↓
noteOn(channel, NOTE_A4, VELOCITY_P);
noteOn(channel, NOTE_A3, VELOCITY_P);
midi_wait(0.5);
noteOff(channel, NOTE_A4, VELOCITY_P);
noteOn(channel, NOTE_C5, VELOCITY_P);
譜面上段のラの音を止め、下段のラの音は継続したまま、新たに上段のドの音を鳴らします。
こんな感じで作り込みます。
$ pio run -t upload
HTML5のaudioに対応していないブラウザのためサンプルは表示されません。
今回は、コード内に演奏情報を直書きしてしまっているので、これでは汎用性がありません。
次回は、ラズベリーパイから楽曲の情報を送り込んで演奏するように変更していきます。
■参考文献
・Arduino MIDI Library Version 5.0.1
・Arduino MIDI Library の使い方
・Midi Baud Rate (31250)
Raspberry Pi(ラズベリー パイ)は、ARMプロセッサを搭載したシングルボードコンピュータ。イギリスのラズベリーパイ財団によって開発されている。
Arduinoで学ぶ組込みシステム入門(第2版)
●Arduinoを使って組込みシステム開発を理解する
・ハードウェアやソフトウェアなどの基礎知識/
・設計から実装までを系統的に説明するモデルベース開発/
・Arduinoを用いた実際の開発例
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1.システム構築をインフラから始めるには/
2.ネットワークを構築する/
3.サーバーを構築する/
4.Webサーバーソフトをインストールする/
5.HTTPの動きを確認する/
6.プライベートサブネットを構築する/
7.NATを構築する/
8.DBを用いたブログシステムの構築/
9.TCP/IPによる通信の仕組みを理解する
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学生時代から独学でプログラミングをはじめ、企業内でデバイスドライバを開発し、そして独立後もたくさんのアプリケーション開発や技術書制作に携わってきた著者。その筆者が大事に使い続ける「C言語」の“昔と今”について、気づいたことや役立つ知識、使ってきたツールなどについて、これまで記してきたことを整理してまとめました。
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