USB-MIDI
2022.09.16
YouTube でも紹介しています。画像をクリックすると再生できます。
MIDIキーボードコントローラーはそれ自体には音声出力機能がないので、DAW(Digital Audio Workstation)ソフトや
音源モジュールなどに繋いで利用するのが一般的です。
今回は、以前にも紹介したAdafruit Music Maker FeatherWing を用いて直接演奏してみます。
■構成図
MIDIキーボードコントローラーには、Nektar Technology SE25 を使いました。
Arduino のアドオンボードである、USB HOST SHIELD にこのコントローラーを繋ぎます。
Arduinoボードは、Diecimila ATmega328です。
※Uno以前のArudinoからの大きな違いは、USBシリアル変換ICがFTDI FT232RLチップからの変更です。
Uno Rev3はATmega16U2、Rev1,Rev2はATmega8U2を搭載しています。
■Nektar Technology SE25■
Nektar SE25 は、25鍵 MIDI キーボードコントローラーです。
Nektar Technology SE25
●ベロシティ対応、ミニサイズの25鍵盤
●3つのベロシティカーブ(デフォルト、ソフト、ハード)
●6つのボタン : オクターブアップ / ダウン、PB1 / PB2、サステイン、パート2
●PB1 / PB2 ボタン : ピッチベンド*、トランスポーズ、ボリューム、パン、トラック**もしくはパッチチェンジ**を割り当て可能
●パート "2" ボタン : オクターブ、MIDI チャンネル、トランスポーズ、レイヤー、ラッチ(モメンタリー)を割り当て可能
●"S" ボタン : サステイン、もしくはモジュレーションを割り当て可能
●ボタンの第2機能として、トランスポートコントロールが可能
●接続 : マイクロ USB ポート(USB バスパワー駆動)
■USB HOST SHIELD
USB Host Shield は、Arduino 開発プラットフォーム用アドオン ボードです。
MIDIキーボードコントローラー接続端子の主流派、USB-MIDIへと移り変わっています。
Arduinoなどのマイコンと通信するためには、USB HOST SHIELDが必要になります。
シールドは USB ホストインターフェイスを提供し、キーボード、マウス、ジョイスティック、MIDI、デジタル カメラ、Bluetooth などの USB デバイスとのフルおよび低速通信を可能にします。
USB Host Shield Hardware Manual
USB ホストシールド
5V で使う場合
赤枠のピンをショートさせます。
電源選択「5V」と「3.3V」とマークされた 2 つのはんだジャンパー。
これらは、さまざまな電源構成に使用されます。
両方のジャンパーが閉じている場合の構成は、UNO、Duemilanove、Mega、Mega 2560 などの公式の Arduino に適しています。
【補足】3.3V で使う場合
赤枠のピンをショートさせます。
■Arduino Diecimila
Arduino Diecimila の ATmega328P-PU版です。
■Adafruit Music Maker FeatherWing
Adafruit Music Maker FeatherWing は、Feather Board のアドオンボードです。
MIDIモードに切り替えることにより、UART RXピンから 31250Kbaud MIDIデータを読み込ませ、シンセ/ドラムマシンのように機能させることができます。 ドラムとサンプルのエフェクトが多数組み込まれています。
詳細は下記の記事を参考にしてください。
MIDI制御/Adafruit Music Maker
■USB HOST SHIELDアドオンボードの接続
USB HOST SHIELD - DIECHIMILA
SCK[13] - SCK
MISO[12] - MOSI
MOSI[11] - MISO
5V - 5V
GND GND
SS[10] - A0
INT[9] A1
電源ピンは、Arduino ボードの電源ピンに接続するために使用されます。
ICSP コネクタは、SPI インターフェイスを使用してデータを送受信するためにシールドによって使用されます。
このコネクタからの SCK、MOSI、MISO、および RESET 信号が使用されます。
※LEONARDO や MEGA2560 でも使えるように、ICSP端子を介して通信を行います。
まずは、USB HOST SHIELD のテストを行います。
写真左は、Raspberry Pi 3 model B です。Pimoroni Piano Hat を被っていますが、Hat は使っていません。
ラズベリーパイのOSは、Raspbian GNU/Linux 10 (buster) です。
ノートパソコンから、TeraTermによりラズベリーパイにSSH接続して、ビルドおよびデバイスモニターに利用します。
■サンプルプログラムのビルド
プログラミングには、GitHubから、USB Host Shield_ライブラリーをダウンロードして使います。
felis/USB_Host_Shield_2.0
まずは、USBH_MIDI_dump.ino をビルドして実行してみます。
ソースコードのビルドには、PlatformIOを使用しています。
Arduino開発環境構築 PlatformIO
$ mkdir diecimila
$ cd diecimila
$ pio init -b diecimilaatmega328
$ pio run -t upload
つぎに、USB HOST SHIELD に MIDIキーボードコントローラーを取り付けて、鍵盤を叩いてみます。
$ pio device monitor -p /dev/ttyUSB0 -b 115200
キーボードの鍵盤をド・レ・ミの順に叩いてみました。
デバイスモニター上には、MIDIメッセージが表示されています。
09 90 3C 48 ドの鍵盤を押す
08 80 3C 40 ドの鍵盤を離す
09 90 3E 53 レの鍵盤を押す
08 80 3E 40 レの鍵盤を離す
09 90 40 55 ミの鍵盤を押す
08 80 40 40 ミの鍵盤を離す
イベントコード(MIDIメッセージ)解説 09 90 3C 48
0x09
eventType MIDIコマンドタイプ上位4ビットの値。
USB MIDIHOST SHIELD / USB MIDIライブラリが独自に出力するもので、標準MIDIコマンドには含まれません。
Music Maker に出力する際には省きます。
0x90
eventType<<4 | channel
MIDIコマンドタイプにチャンネル番号を付与した値。
MIDIコマンドタイプを上位に4ビットシフトして、そこにチャンネル番号との論理和を取ります。
この例では、チャンネル番号は0としています。
0x3C
Note No. 音色番号
0x48
Velocity(0x01~0x7F) 鍵盤を押した強さ
■Music Maker への出力用に改造
それでは、先のUSBH_MIDI_dump.ino を改造して、Music Maker に UART接続によりMIDIコマンドを送信するように変更します。
$ vi src/usb_midi.ino
#include <usbh_midi.h>
#include <usbhub.h>
#include <SoftwareSerial.h>
#define VS1053_BANK_DEFAULT 0x00
#define GM_ACOUSTIC_PIANO 0x00
#define VELOCITY_FFF 127
#define MIDI_CHAN_BANK 0x00
#define MIDI_CHAN_VOLUME 0x07
#define MIDI_CHAN_MSG 0xB0
#define MIDI_CHAN_PROGRAM 0xC0
#define VELOCITY_MP 64
USB Usb;
USBHub Hub(&Usb);
USBH_MIDI Midi(&Usb);
void MIDI_poll();
void onInit() {
char buf[20];
uint16_t vid = Midi.idVendor();
uint16_t pid = Midi.idProduct();
// sprintf(buf, "VID:%04X, PID:%04X", vid, pid);
// Serial.println(buf);
}
void setChannelBank(uint8_t channel, uint8_t bank) {
Serial.write(MIDI_CHAN_MSG | channel);
Serial.write((uint8_t)MIDI_CHAN_BANK);
Serial.write(bank);
}
void setChannelVolume(uint8_t channel, uint8_t vol) {
Serial.write(MIDI_CHAN_MSG | channel);
Serial.write(MIDI_CHAN_VOLUME);
Serial.write(vol);
}
void setInstrument(uint8_t channel, uint8_t instrument) {
Serial.write(MIDI_CHAN_PROGRAM | channel);
Serial.write(instrument);
delay(10);
}
void setup() {
uint8_t channel = 0;
Serial.begin(31250);
if (Usb.Init() == -1) {
while (1); //halt
}
delay( 200 );
// Register onInit() function
Midi.attachOnInit(onInit);
setChannelBank(channel, VS1053_BANK_DEFAULT);
setChannelVolume(channel, VELOCITY_FFF);
setInstrument(channel, GM_ACOUSTIC_PIANO);
}
void loop() {
Usb.Task();
if ( Midi ) MIDI_poll();
}
// Poll USB MIDI Controler and send to serial MIDI
void MIDI_poll() {
uint8_t bufMidi[MIDI_EVENT_PACKET_SIZE];
uint16_t rcvd;
if (Midi.RecvData( &rcvd, bufMidi) == 0 ) {
switch(bufMidi[0]) {
case 0x09: // Note-on
bufMidi[3] = VELOCITY_MP;
Serial.write(&bufMidi[1],3);
break;
case 0x08: // Note-off
case 0x0B: // Continuous controller
case 0x0E: // Pitch bend
Serial.write(&bufMidi[1],3);
break;
case 0x0A: // After-touch
case 0x0C: // Program change
Serial.write(&bufMidi[1],2);
break;
case 0x0D: // Channel Pressure
break;
case 0x0F: // System Realtime message (non-musical commands)
Serial.write(&bufMidi[1],1);
break;
}
}
}
コード解説
void MIDI_poll() {
uint8_t bufMidi[MIDI_EVENT_PACKET_SIZE];
uint16_t rcvd;
if (Midi.RecvData( &rcvd, bufMidi) == 0 ) {
switch(bufMidi[0]) {
case 0x09: // Note-on
bufMidi[3] = VELOCITY_MP;
Serial.write(&bufMidi[1],3);
break;
case 0x08: // Note-off
case 0x0B: // Continuous controller
case 0x0E: // Pitch bend
Serial.write(&bufMidi[1],3);
break;
case 0x0A: // After-touch
case 0x0C: // Program change
Serial.write(&bufMidi[1],2);
break;
case 0x0D: // Channel Pressure
break;
case 0x0F: // System Realtime message (non-musical commands)
Serial.write(&bufMidi[1],1);
break;
}
}
}
イベントタイプごとに対応したMIDIコマンドを送信します。
Command Meaning parameters param 1 param 2
0x80 Note-off 2 key velocity
0x90 Note-on 2 key veolcity
0xA0 Aftertouch 2 key touch
0xB0 Continuous controller 2 controller value
0xC0 Patch change 2 instrument
0xD0 Channel Pressure 1 pressure
0xE0 Pitch bend 2 lsb (7 bits) msb (7 bits)
0xF0 (non-musical commands)
MIDIメッセージのタイプにより、メッセージの長さが異なるので、必要なバイト数を送信します。
MIDIキーボードでは、打鍵の強さが安定しないので、強さを固定に変更しています。
bufMidi[3] = VELOCITY_MP;
setup()関数内で、チャンネル指定、音量、音色(楽器)を指定しています。
また、MIDIのボーレート(転送速度)は 31250bps になります。
#define VS1053_BANK_DEFAULT 0x00
#define GM_ACOUSTIC_PIANO 0x00
#define VELOCITY_FFF 127
#define MIDI_CHAN_BANK 0x00
#define MIDI_CHAN_VOLUME 0x07
#define MIDI_CHAN_MSG 0xB0
#define MIDI_CHAN_PROGRAM 0xC0
#define VELOCITY_MP 64
void setChannelBank(uint8_t channel, uint8_t bank) {
Serial.write(MIDI_CHAN_MSG | channel);
Serial.write((uint8_t)MIDI_CHAN_BANK);
Serial.write(bank);
}
void setChannelVolume(uint8_t channel, uint8_t vol) {
Serial.write(MIDI_CHAN_MSG | channel);
Serial.write(MIDI_CHAN_VOLUME);
Serial.write(vol);
}
void setInstrument(uint8_t channel, uint8_t instrument) {
Serial.write(MIDI_CHAN_PROGRAM | channel);
Serial.write(instrument);
delay(10);
}
void setup() {
uint8_t channel = 0;
~~~~~~~~
Serial.begin(31250);
setChannelBank(channel, VS1053_BANK_DEFAULT);
setChannelVolume(channel, VELOCITY_FFF);
setInstrument(channel, GM_ACOUSTIC_PIANO);
}
ビルドして、Arduino に書き込みます。
$ pio run -t upload
■DIECIMILA と Music Maker の接続
Arduino と Music Maker をシリアル接続して、Music Maker で、MIDIメッセージを演奏してみます。
DIECHIMILA - Music Maker
TX -(5V)分圧(3.3V)- RX
3.3V - 3.3V
GND - GND
Music Maker との通信にハードウェアシリアルを使用しているので、
ビルドに使用した Raspberry Pi とのUSBケーブルを外して、Arduino のUSBポートには電源ケーブルを差し込みます。
写真にあるラジオにはLINE-IN端子があるので、スピーカーとして用いています。
MIDIコントローラ SE25の消費電力は5V100mAと少ないので、USB HOST SHIELDからのUSB電力供給で十分賄えてしまいます。
さくら便り 国府弘子
HTML5のaudioに対応していないブラウザのためサンプルは表示されません。
MIDIフォーマットについては、下記の記事も参考にしてください。
MIDIフォーマット解析
■参考文献
・Bitwig Studio 8-Track
・マイコンで電子ピアノのMIDI信号を読み取る - West Gate Laboratory
・DTM技術情報/1.MIDIメッセージ一覧
・Arduino MicroでMIDIUSBを使う
・Essentials of the MIDI protocol
Raspberry Pi(ラズベリー パイ)は、ARMプロセッサを搭載したシングルボードコンピュータ。イギリスのラズベリーパイ財団によって開発されている。
Arduinoで学ぶ組込みシステム入門(第2版)
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・ハードウェアやソフトウェアなどの基礎知識/
・設計から実装までを系統的に説明するモデルベース開発/
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